DIGITIMESは2026年10月12日、台湾の半導体業界が20MWを超える地熱電力の長期契約を交渉しており、近く締結される見通しだと報じた。AIによって電力需要が急増し、半導体業界は安定した再生可能エネルギー源を求めているという。買い手と売り手の名前は明らかにされていない。

地熱はどのような電力か

地熱発電は地下深くの熱でタービンを回し、発電時にCO2を排出しない。太陽光や風力と違い、日照や風速に左右されず、24時間安定して発電できる「ベースロード型」の再生可能エネルギーだ。

半導体工場やデータセンターは年中稼働し、電力需要は平坦だ。太陽光は昼間に発電し、風力は季節で変動する。地熱は夜間や無風時の安定電源を補う。

地熱発電所の断面。熱水が生産井を上がってタービンを回し、水は還元井から地層に戻る
地熱発電所は地下から熱を取り出して発電し、水を地層に戻す

台湾初の企業による地熱電力購入契約

2025年4月、GoogleはBaseload Power Taiwan(倍速羅得)と台湾初の企業向け地熱電力購入契約を結んだ。Googleにとってもアジア太平洋地域で初の事例だ。最初の発電所は終日供給できる10MWを電力網に加え、Googleの台湾のデータセンターとオフィスで使われる。

経済部の統計では、2024年末時点の台湾の地熱発電の累計設備容量は約7MW。10MWや20MW超の契約一件で、当時の台湾全体の地熱容量を上回る規模になる。

左に地熱発電所、右にデータセンターと半導体工場。送電鉄塔で結ばれ、上に握手のアイコン
企業と発電事業者が長期の電力購入契約を結び、電力網を通じて需要家へ届ける

半導体業界の現在の再エネ契約

TSMCは2020年、半導体企業として世界で初めてRE100に加盟した。2023年にはARK Powerと期間20年、総量20,000GWh(年1,000GWh)の再生可能エネルギー共同調達契約を結んだ。半分をTSMCが引き取り、残り半分はサプライヤーが共同で調達できる。電力は養殖池と組み合わせた太陽光発電所から供給される。

公開情報では、TSMCが地熱電力の契約を結んだ記録はまだない。

政策目標と推進策

経済部は2026年4月、立法院への報告で2030年の地熱発電目標を200MWとし、国営企業が先導して全国で探査を広げると説明した。行政院が2025年に承認した「地熱脱炭素フラッグシップ行動計画」は深部地熱を柱とし、台湾中油が宜蘭県員山に25MWの深部地熱実証発電所を建設する。強化地熱システム(EGS)技術を導入し、2030年の完成を予定している。

政府の主な施策は次のとおり。

  • 地熱発電の実証奨励として、掘削費用の最大50%、上限1億台湾ドルを補助。
  • 探査データを公開し、事業者の初期評価コストを下げる。
  • 再生可能エネルギー発展条例を改正し、地熱資源が国に帰属することを明記するほか、他人の土地の地下深部を通る傾斜井の利用ルールを定める予定。
  • 原住民族委員会と連携し、部落との協議手続きを整える。
山の斜面の掘削リグから、傾斜井が地下の高温の割れ目岩盤へ曲がりながら延びる
深部地熱は傾斜井で地下の高温岩盤まで掘り進む

台湾が参考にできる方向

  • 長期契約で開発を後押し:地熱は初期の探査費用が大きい。企業が長期の電力購入契約を結べば、開発事業者は安定した収入見通しを得られ、資金調達や掘削の加速につながる。Googleの事例はこのモデルを示しており、半導体業界が加われば買い手の規模はさらに広がる。
  • 官民の役割分担:国営企業が深部地熱の実証と技術検証を担い、民間事業者が浅部の発電所を開発し、企業が長期契約で電力を引き取る。三者が異なる段階のリスクを分担する。
  • データ公開:探査データが公開されれば、より多くの事業者が候補地を評価でき、産業の規模拡大につながる。
  • 地域との共栄:多くの候補地は原住民族地域にある。丁寧な協議と還元の仕組みにより、部落も開発の成果を分かち合える。
昼と夜に分かれた円環に太陽光パネルと風車が並び、緑の地熱の帯が一周する
太陽光、風力、地熱の組み合わせで終日グリーン電力を供給

出典