EUのイノベーション基金は、小型モジュール炉(SMR)と直接空気回収・貯留(DACCS)の事業を初めて支援対象に選びました。欧州委員会が2026年10月19日に発表しました。技術の選択肢が広がる一方、選定は資金交付や商業運転の開始を意味しません。
選定されたネットゼロ技術事業は77件で、支援総額は34億ユーロの予定です。事業者は今後、欧州気候・インフラ・環境執行機関(CINEA)との助成契約の準備に進みます。予算、工程、技術・財務上の成果物、法的義務を詰めます。この手続きの結果は2027年第1四半期に公表される見通しです。
まず押さえておきたい用語
- 小型モジュール炉(SMR):比較的小規模な原子炉です。この記事の対象事業は発電ではなく熱供給を目的とします。
- 直接空気回収・貯留(DACCS):大気中の二酸化炭素を回収し、長期的に貯留する仕組みです。
- 助成契約:選定後に準備する契約です。予算、工程、交付責任などを定めます。
原子力による熱供給と大気からの除去は別の役割です
NetZeroHeatは、原子力で地域に熱を供給する計画です。公式事業一覧によると、フランスのCalogenaが熱供給専用のSMRをPierrelatteの地域熱供給網に接続します。年間131GWhの低炭素熱供給を目指します。この数字は発電量ではありません。
Furuは、大気中の二酸化炭素を回収して貯留するパイロット事業です。Sirona Technologies NorwayがノルウェーのØygardenに施設を建設する計画です。再生可能電力を使い、Northern Lightsの地中貯留につなぎます。年間約4,000トンのCO₂除去を目指します。いずれの事業も計画規模であり、達成済みの運転実績ではありません。
両者は「原子力と直接空気回収を組み合わせた一つの事業」ではありません。前者は低炭素の熱源を供給し、後者は大気中のCO₂を回収して恒久的に貯留します。今回の発表は、両事業の間にエネルギー供給関係があるとは述べていません。

炭素市場の収入を低炭素技術の実証に充てます
イノベーション基金は、EU排出量取引制度(EU ETS)の収入を革新的な低炭素技術の実証・導入に振り向ける仕組みです。炭素価格は排出にコストを課すだけではありません。基金を通じて、技術が実証段階を進むための資金も支えます。

まだ確定していないこと
助成契約の最終条件と実際の運転成果は、今回の選定だけでは確定しません。選定、助成契約、建設、実際の運転は別の段階です。選定結果だけで、コスト競争力や実際の脱炭素効果が証明されたとはいえません。
本サイトの見方
以下は本サイトの読み解きであり、欧州委員会の公式見解ではありません。技術開発者にとって、今回の選定は政策上の方向性を示すものです。ただし、今後は契約が成立するか、最終的に何を成果物として約束するかを追う必要があります。
台湾への示唆も、特定技術への助成の是非だけではありません。公的資金によって、熱供給、恒久的な除去、次の増設を支える運転データなど、どのような検証可能な成果を得るかが重要です。

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