ドイツの越境カーボンマネジメント協力に新たな進展があった。ドイツ連邦経済・エネルギー省は2026年10月7日、フランク・ヴェッツェル事務次官が前日にベルリンでデンマーク、オランダとそれぞれCO₂輸出の意向書に署名したと発表し、CO₂の回収・貯留・利用(CCS/CCU)分野の協力を進めるとした。今回公表されたのは協力の意向であり、発表では実際の輸出量や商業運転の時期は示されていない。ドイツ政府の発表
越境貯留には許認可と責任の切れ目ない連携が必要
署名はドイツのカーボンマネジメント・フォーラムによる初の戦略対話の場で行われた。ドイツ政府は、経済面の課題にも対応し、CO₂の回収・輸送・貯留・利用の各分野で具体的な措置を盛り込むカーボンマネジメント行動計画を策定中であることも明らかにした。越境協力を進めると同時に、インフラと投資環境も整える必要があることがうかがえる。
国際海事機関(IMO)はロンドン議定書に関する説明の中で、CO₂を国境を越えて海底下の地層に輸送・貯留するには国家間の協定や取り決めが必要であり、許認可と責任の配分も関わると指摘している。2009年改正の暫定適用を認める2019年の決議には、正式な宣言と通報の要件もある。なお、ドイツはすでに二酸化炭素貯留・輸送法(KSpTG)を改正し、ロンドン議定書第6条の改正も批准している。これは越境貯留を理解するうえでの制度的な背景であり、一つの報道発表だけで、個別プロジェクトの法的・商業的条件がすべて整ったと判断することはできない。IMOの制度説明
台湾の方針としてまず答えるべき問い
以下はドイツの事例から導いた政策上の考察である。台湾が海外での貯留を検討するのであれば、欧州の協力モデルをそのまま持ち込むのではなく、適用条件を一つずつ確認すべきだ。

第一は越境時の責任である。回収施設、輸送事業者、貯留事業者の間で、CO₂はどの時点で引き渡されるのか。品質が基準を満たさない場合や、輸送の中断、圧入の制限が生じた場合、その対応費用は誰が負担するのか。規制当局はどのように完全なデータを入手し、国境をまたぐことで責任が途切れないようにするのか。こうした条件は許認可、契約、監督の取り決めの間で整合していなければならない。
第二は削減量の認定である。排出源での回収量、船積み量から、最終的な圧入量と継続的なモニタリング量まで、相互に照合できる記録を整える必要がある。企業の脱炭素に関する主張(クレーム)や関連制度に用いるのであれば、どの削減量が認められ、誰が検証するのか、そして同じCO₂が二重に計上されるのをどう防ぐかも確認しなければならない。回収や輸送で追加的に消費されるエネルギーも、削減効果の評価に含めるべきである。
第三は長期的な責任であり、これも投資前に詰めておく必要がある。貯留サイトの閉鎖後に誰がモニタリングするのか、漏えいが起きた場合にどう対処するのか、事業者が撤退した場合の費用はどこから賄うのか。これらはいずれも貯留サービスの信頼性や、企業が長期契約を結ぶかどうかに影響する。
企業は最終的にチェーン全体のコストを見積もる必要がある
産業界が評価する際には、見積もりの範囲に回収、圧縮または液化、港湾での荷役、輸送、圧入、モニタリングを含めるべきだ。1トン当たりの貯留価格だけを見ると、上流の設備や物流の費用を見落としやすい。初期の需要家(アンカー顧客)がどれだけの量を確約するか、施設の稼働率は十分か、遅延リスクをどう分担するかも、プロジェクトが資金調達できるかどうかを左右する。

今回の意向書について次に注目すべきは、協力が具体的な許認可、輸送、貯留サービスの取り決めにどう結びつくかである。台湾にとっては、まず責任、認定、チェーン全体のコストを明確にすることで、海外貯留がどの排出源に適しているのか、そして脱炭素計画の中でどの程度の比重を占めるべきかを判断できるようになる。
