10月23日、台湾は台風の日でした。以前教えた学生から声をかけられ、台湾経済研究院(TIER)が主催する「国際再生可能エネルギー市場および追跡システムフォーラム」をオンラインで聴きました。フォーラムは午後2時から4時15分まで全編オンラインで、日本、韓国、ドイツ、英国、台湾の講演者が、各国の企業が再エネ電力をどう調達し、証書でどう追跡しているかを紹介しました。

聴いた講演は次のとおりです。関西電力によるアジア各地の企業再エネ調達、韓国サステナビリティ投資フォーラム(KoSIF)による韓国の企業再エネ調達、ドイツの原産地保証登録簿(HKNR)によるドイツのGO登録制度の紹介、Granular Energyによる電力小売事業者の時間単位マッチング料金メニュー、そしてRECCESSARYによる東南アジアの再エネ電力の実際の供給問題です。

一、全体のポイント

1. 再エネ調達に共通の正解はない

電力市場の構造、証書のルール、価格は国によって大きく違います。電力購入契約(PPA)を直接結べる国もあれば、証書や電力会社のグリーン料金メニューしか選べない国もあります。講演者の経験を並べてみると、一つの手段だけで全拠点の需要を満たすのは難しいことがわかります。

屋根置き太陽光・蓄電池・洋上風力の組み合わせ
屋根置き太陽光・蓄電池・洋上風力の組み合わせ(AI生成イメージ)

私の結論は、企業は再エネ調達をポートフォリオとして組み立て、各国の制度変更に合わせて1〜2年ごとに見直す必要があるということです。ルールの変化は速く、次に挙げる国際基準もすべて改訂の途中です。

2. 年間の総量から、時間単位・地域単位へ

これまで企業は、1年間の電力使用量と1年分の証書を突き合わせるのが一般的でした。主要な国際基準やイニシアティブは、時間と場所をより細かく見る方向に動いています。

電力の使用と発電を時間単位で合わせる
電力の使用と発電を時間単位で合わせる(AI生成イメージ)
  • GHGプロトコル スコープ2:2025〜2026年のパブリックコンサルテーション案では、マーケット基準手法で計上できる証書を、時間単位の消費に対応し、電力を届けられる系統地域から調達したものに限ることが提案されました。GHGプロトコルによると、独立基準委員会(ISB)は2026年7月、二つのマーケット基準手法を設ける案を多数で支持しました。手法1は時間単位マッチング、供給可能性、追加性の要件を含み、手法2は2015年版の考え方を維持します。これらはまだ確定していません。次の統合パブリックコンサルテーションは2027年第2四半期、ISOとの共同基準の公表は2028年第4四半期の予定です。
  • SBTi:企業ネットゼロ基準2.0版は、カテゴリーAの企業に対し、年間電力使用量が10GWh以上の活動範囲について、低炭素電力と時間単位でマッチングした割合を算定・報告するよう求めています。基準値(2030年まで50%、2035年まで75%、その後90%)を満たすと、SBTiのダッシュボードで認定を受けられます。同じ版では、市場手段は原則として運転開始から15年以内の案件に由来することも求めています。
  • RE100:技術基準は、再エネ属性を消費地と同じ市場範囲で調達することを求め、運転開始から15年という年限ルールも設けています。時間単位マッチングはRE100の要件ではありませんが、RE100は企業の時間マッチングの取り組みを収集し、評価しています。
  • 24/7カーボンフリー電力(24/7 CFE):UN Energyが推進する24/7カーボンフリーエネルギー・コンパクトは、すべての時間の電力使用をカーボンフリー電力でまかなうことを目指しています。

講演者は例として、韓国の新しいREGOや、ドイツなど欧州の電力小売事業者がすでに提供している時間単位の料金メニューを挙げました。

3. 証書は市場をまたぐ共通言語

アジアの多くの国はI-REC、欧州は原産地保証(Guarantee of Origin、GO)を使い、韓国はREGOを立ち上げようとしています。こうした証書によって、構造の異なる電力市場を追跡し、比較できるようになります。物理的な再エネ電力を買えない拠点でも証書で対応できるため、実物調達の不足も補えます。

欧州のGOは電力・ガス・水素へ広がる
欧州のGOは電力・ガス・水素へ広がる(AI生成イメージ)

韓国のREGOについては、終了後に韓国気候エネルギー環境部の報道資料を確認しました。正式名称は「自家消費用再生可能エネルギー発電設備証書」で、住宅や産業団地に設置された自家消費用の太陽光などが対象です。再生可能エネルギー統合監視システム(REMS)で発電履歴を確認したうえで1MWhごとに1枚発行され、RE100に参加する企業などに販売できます。2026年8〜11月にモデル事業を行い、2027年から本格実施する計画です。

EUでは、再生可能エネルギー指令(RED II)が加盟国にGO制度の運用を求め、その対象を電力から再生可能ガス、水素、熱・冷熱へ広げることを義務づけています。

4. サプライチェーンの圧力が政策と市場をつくる

韓国の講演者によると、Apple、BMWなどの多国籍顧客がサプライヤーに再エネ電力を求めたことで、韓国はおよそ5年のうちに企業の再エネ調達の仕組みを急いで整えました。ドイツではEUのRED IIが登録制度の拡充を促しました。ドイツ連邦環境庁(UBA)によると、ドイツは原産地保証登録法(HkNRG)に基づき、ガス(水素を含む)と熱・冷熱のGO登録簿を設けることを定めており、現在構築中です。

二、講演を通じた観察と推論

1. 証書と時間単位マッチングは同じ方向を向いている

各講演を並べると方向はそろっていました。関西電力は証書がもたらす調達の柔軟性を強調し、韓国の講演者はREGOにタイムスタンプが付くことに触れ、Granular Energyは英国や欧州の小売事業者がすでに時間単位マッチングの料金メニューを提供していることを紹介しました。証書は「1年間にどれだけ再エネを使ったか」の証明から、どの時間・どの場所の電力かを示す記録へと変わりつつあります。

2. 東南アジアのギャップ

RECCESSARYの講演タイトルは「東南アジアの再エネ電力:扉は開いた、電力は届くのか」でした。講演者によると、東南アジアでは年間単位の証書は手に入りやすい一方、物理的な電力の供給は送電網、許認可、規制に制約されています。現地ではAIデータセンターが急増しており、電力は24時間使われます。国際基準が時間単位マッチングへ向かうなら、蓄電と時間単位の検証も追いつく必要があります。この点はGranular Energyの講演で扱われた時間単位マッチングとも重なります。

東南アジアの再エネはデータセンターまで届くか
東南アジアの再エネはデータセンターまで届くか(AI生成イメージ)

3. 台湾の状況

講演者は、台湾の再エネ調達はコストが高く、供給も限られていると指摘しました。私の推論では、台湾企業には国内調達と証書を組み合わせた戦略がより必要になりそうです。あわせて、国際基準が証書の適格性や時間単位マッチングに何を求めるかにも注意が必要です。

台湾西海岸の養殖池ソーラーと洋上風力
台湾西海岸の養殖池ソーラーと洋上風力(AI生成イメージ)

データの面では、台湾にもある程度の土台があります。EnergyTagによると、台湾ではスマートメーターが300万台以上設置されており、経済部標準検験局の国家再生可能エネルギー証書センター(T-REC)の証書は15分単位の計量データに基づいているため、技術的には時間単位の証書に対応できます。

4. 韓国の進め方に学ぶ

韓国は顧客とサプライチェーンの要求から逆算して、政策と仕組みを設計しました。台湾の輸出産業も同じような顧客要求に直面しており、この進め方は参考になります。

5. ドイツの原則に学ぶ

ドイツの講演者は二重計上の防止を強調しました。ドイツ再生可能エネルギー法(EEG)第80条を確認すると、EEGの買取支援を受けた電力について、事業者はGOを譲渡できません。例外は地域証明(Regionalnachweise)だけです。講演者はまた、GOの取り消し(償却)は供給契約のある需要家に限られると説明しました。これらのルールは、同じ電力が二度売られるのを防ぎ、証書の信頼性を保つためのものです。

フォーラムを聴いて一番実務的だと感じたのは、再エネ調達のルールはまだ変わり続けているので、企業は今のうちに時間単位の電力使用データを整理し、地域ごとの証書ルールの違いを把握しておくべきだという点です。

参考資料