中央研究院人文社会科学研究センター地理情報科学研究専題センター(以下、中研院GISセンター)は2026年8月7日、逢甲大学都市計画・空間情報学科、内政部国土測絵センター、3D GIS企業の藏識科技と共同で「建築物屋根太陽光発電ポテンシャル3D検索サービス」を公開したと発表しました。住所を入力すると該当する3D建物に移動し、屋根の有効設置面積、推定設置容量、発電ポテンシャル、推定収益が表示されます。アカウント不要の無料サービスで、第1弾の対象は臺中市のみです。公開時点でチームは、8月末までに六つの直轄市へ広げ、その後はデータの整備状況に応じて全国に展開する予定だとしていました。
使い方は、中央研究院の「3D時空資訊整合平台」(earth.rchss.sinica.edu.tw)を開き、「定位搜尋」から「建築光電潛力」を選んで住所を入力します。「披覆」機能をオンにすると、発電ポテンシャルが3D建物に色で表示され、色が濃いほどポテンシャルが高いことを示します。
8月施行の建築物太陽光設置基準に対応
内政部が経済部と共同で定めた「建築物設置太陽光電発電設備標準」は2026年8月1日に施行されました。建築面積1,000平方メートル以上の新築・増築・改築の建築物は、原則として20平方メートルごとに1キロワット(kW)の太陽光発電設備を設置する必要があります。建築面積2,000平方メートルの新築工場なら、原則100kWとなります。

中研院GISセンターによると、このサービスは建設業者が計画初期に設置規模を把握したり、太陽光事業者が屋根を評価したり、建物所有者が自分の建物の条件を知ったりするのに役立ちます。
手法の出発点は、逢甲大学都市計画・空間情報学科の学部生、謝宸源さん、林子庭さん、葉育甄さんの研究『屋根の上の発電所:DSMと日照シミュレーションを統合した都市太陽光発電ポテンシャルマップ』(指導:徐逸祥准教授)です。台灣地理資訊學會主催の第8回国土空間データGISコンテストで大学部門1位となり、当初は臺中市の工業区を対象としていました。公開版では、国土測絵センターが国の空間データを提供し、逢甲大学チームが屋根の日照・太陽光評価モデルを構築し、中研院GISセンターと藏識科技が3D GISの検索画面を開発しました。
住所から3D建物へ:使われている国の基盤地図
システムは内政部の「多維度國家空間資訊服務平臺」のデータをもとに、三つの基盤地図を組み合わせています。

- 数値標高モデル(DEM):内政部地政司が作成。地面そのものの高さを記録しています。
- 臺灣通用電子地図の棟別建物輪郭:国土測絵センターが作成。建物1棟ごとの平面形状です。
- 国土利用現況調査:土地ごとの現在の用途。設置が法的に可能かを絞り込むのに使います。
DEMは地面だけを表し、建物や樹木は含みません。建物輪郭に建物の高さを加えると、地形の上に建物が3Dで立ち上がり、屋根の位置と高さが決まります。学生の元の研究では数値表層モデル(DSM)を使っています。DSMは建物や樹木を含む表面の高さを記録したもので、DEMと組み合わせて使われることが多いデータです。
日照・影・日射量の計算方法
屋根が1年間に受ける太陽エネルギーは、主に三つの要素で決まります。太陽の位置、大気を通過した後に残る光の量、そして屋根が影に入っているかどうかです。中研院によると、評価モデルは臺灣の太陽軌道と大気透過率を考慮し、地形の起伏、建物の絶対高さ、周辺の建物や設備が時間帯ごとに落とす影を計算しています。

この種の日照シミュレーションでは一般に、緯度・日付・時刻から太陽高度と方位角を求めます。1年の中の多数の時点について、太陽から屋根への光の経路を高い建物や山が遮っていないかを調べ、遮られた時点は直達日射を数えません。これを積み上げると、屋根の各部分が1年に受ける日射量が得られます。平面の地図ではどの建物がどこに影を落とすか分からないため、3D建物と地形のデータが必要になります。
日射量から設置容量と収益へ
日射量を求めた後、モデルは業界の実務パラメータとしてパネルの変換効率、システム出力係数(PR値)、屋根の実質利用係数、最新の固定価格買取単価を適用し、有効設置面積、推定設置容量、発電ポテンシャル、収益を推計します。

- 屋根の実質利用係数:パネルを置けない部分を考慮し、屋根面積を有効設置面積に換算する係数です。
- システム出力係数(PR値):実際の発電量と理論発電量の比で、配線、パワーコンディショナ、温度などによる損失を反映します。
- 固定価格買取単価:経済部が公告する再生可能エネルギー電力の買取価格で、売電収入の推計に使います。
検索結果はあくまで初期的な推計です。実際の設置容量は建物の構造、屋上設備、消防活動スペース、電力需要、系統連系、関連法規によって変わり、技師・建築士・太陽光事業者による現地調査と設計が必要です。また、建築許可や使用許可などの法定審査に代わるものではありません。
臺灣が参考にできる方向
- 基準の対象となる案件は設計初期に確認:建築面積1,000平方メートル以上の新築・増築・改築では、まず検索結果で屋根の設置規模を見積もり、その後に専門家が構造と系統連系を評価する流れが考えられます。
- モデルのパラメータを公開:PR値、利用係数、変換効率の設定値が画面に示されれば、現地設計の結果と比べやすくなります。
- データ更新の頻度が結果を左右する:新しい建物は周辺の屋根の影の条件を変えるため、建物輪郭と高さデータの更新頻度が、検索結果と現況のずれに影響します。
- グリーン電力調達とあわせて考える:屋根置き太陽光は地域内の電源の一つです。自家消費とグリーン電力購入を比べる企業は、当サイトの「再エネ調達は時間単位・地域単位へ:国際再生可能エネルギー市場フォーラム聴講メモ」も参考になります。
出典
- 中央研究院人文社会科学研究センター地理情報科学研究専題センター「輸入門牌即可掌握太陽能板設置與發電潛力,國家底圖支援建築光電新制落實」(中国語)、2026-08-07:https://gis.rchss.sinica.edu.tw/pv_panel/
- 中央通訊社「產官學研推屋頂光電查詢系統 輸入門牌可測出潛力」(中国語)、2026-08-08:https://www.cna.com.tw/news/ahel/202608080066.aspx
- 逢甲大学「內政部與中研院導入逢甲學生專題 開發建築光電3D查詢公共服務」(中国語)、2026-08-19:https://www.fcu.edu.tw/news/2026081901/
- 中央研究院 3D時空資訊整合平台:https://earth.rchss.sinica.edu.tw

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